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#4 隠岐の杉

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隠岐に行ってきた。そんな胸を張るほど旅に出たこともないけど、ここは私が一番好きな旅先だ。去年訪れてから1年間ずっと戻りたいと思い続けていたし、今年行って帰ってきた今もまた行きたいと思っている。そこに住む人に会いたいという気持ちもあるし、何より私は隠岐の景色が大好きなのだ。海でも山でも、去年見た景色とはまた違った顔が見ることができる。まあ自然なんやからそりゃ当たり前やろって話なんやけども。ただ何となく、隠岐の自然は荒い気がしている。周りの海も日本海だし、山に生えている植物も住んでいる生き物も、人間に愛想も容赦もない感じがする。そのぶっきらぼうさと荒々しさが、他で見た自然と違う。また、それらの恩恵に与りながら、でも特別注意を払っているわけでもなく、でもこの環境は特別なんだと知りながら生きている人と時間を過ごすのは面白い。都会では、経験できないことである。また面白いことに、去年の私がこの良さを求めて隠岐に来たわけでもないし、去年隠岐に訪れるまではこの良さが存在することさえ知らなかった。

 

隠岐には全部で4つ島があって、去年滞在していたのは海士町というところ。海士町観光協会インターンに参加し、2週間の滞在だった。

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これは海士町で知り合った漁師さんに、地平線に沈む夕焼けを漁船に乗って見に行った時の写真。この景色を見て、この島に惚れた。(この写真に写ってるのは海士じゃないかもしれないんやけど。笑)磯の香りがそこまで好きじゃなかったのに、この1時間で大好きになった。感動は人の好みまでをガラッと変える力を持っている。この日は確か海士に行って3日目か4日目だったはず。海士の魅力に憑かれるまで、そんなに時間はかからなかった。

 

 

去年も遊びで訪れた、西ノ島町。ここは摩天崖という崖が本当にかっこいい。

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そこらへんに牛と馬がいて、人間には慣れているものの愛想は全くない。あの貫禄をもってすれば、牛と馬にこんにちは~と声をかけながら崖を見に行き、帰りがけにお疲れ様でーすと言いたくなってしまうのはきっと私だけではないはず。どっしり感が六甲山牧場の馬たちの屁でもない。

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そして今回初上陸の、知夫村。人間よりたぬきの数の方が一桁多いそうだが、たぬきのたの字も見かけなかった。西ノ島の牛さん馬さんと比べてシャイなのかもしれない。ここにはずっと来たかった赤壁がある。言ったら活断層なのだが、その迫力は言葉にならない。

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瀬戸内海、太平洋沿岸では見ることができないこの荒さ。かっこいいの一言に尽きる。生まれて初めて断層を見て鳥肌が立った。大地に叫ばれているような気がして、人間は地球には勝てないと思った。所詮iPhoneで撮った写真では伝えることができないので、ぜひ一人でも多くの人に生で見てほしい。

 

そして、最初に載せた写真が隠岐の島町にある乳杉。3000年も前から隠岐で時代の変遷を眺めてきた。隠岐の島町隠岐四島の中で一番大きな島で、隠岐の中では一番「都会」である。他三島が島前と呼ばれているのに対し、この島一つで島後と呼ばれている。その分魅力もたくさんで、正直魅力を知り切れなかった感は残っている。まあまた訪れるよい口実ということにしておこう。ポジティブ。

 

この文章を書きながら気づいた。今の私の状態は隠岐ロスというよりも、完全に隠岐の魅力にとりつかれている。今はお金も仕事も能力もないから良いものの、もしそれらを少しでも持っていたら、荷造りもそこそこにふらっとフェリーに乗り込んでいるだろう。いつか自分の人生の線上に、隠岐があればいいのになぁと思っている。